『きみに読む物語』ニック・カサヴェテス(監督)

映画『きみに読む物語』を観ました。2005年公開(日本)で、全世界興行収入$115,603,229(約112億円※1ドル97円、ソースはWikipedia)。泣けるラブストーリーの鉄板です。

噂にたがわぬ良い映画でした。秋の夜長に中年独身男子が一人の部屋で観るには最適のチョイスでした。

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材木置き場で働く底辺労働者のノアと夏休みの間だけ別荘に家族でやってきた金持ちのアリーが出会い、恋に落ち、引き離され、再会し、再び引き寄せられていく物語です。その物語を年老いたノアが認知症に犯され記憶を失ったアリーに語り聞かせる形で進行します。

この物語の主題をどこに置くかはなかなかに難しいです。身分の違うノアとアリーが格差を超えて数々の障壁を乗り越えて一緒になる幸福なラブストーリーと捉えることもできるし、そんな大恋愛の二人の仲をを切り裂く老いと病気の無情さとも捉えられるし、はたまた最後の困難も乗り越えて共に現世を去る二人の幸福な人生と捉えることもできるでしょう。

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自分の身に置き換えてみれば、ひと夏の恋に落ちるほど若くもないし、過去を振り返ってもそんな激しい恋に落ちたこともないし、はたまた病気の時も健やかなる時も共に過ごし共に死を迎える伴侶がいる将来を思い描ける状況でもありません。端的に言って、感情移入できる対象が誰一人として現れませんでした。

きっと5年前までの自分ならこんな映画を観る気も起きなかったし、仮に観たとしても陳腐なストーリーの安っぽい映画と評価していたかもしれません。それでも、この歳になって観てみたら、こんなにも心動かされたのはなぜかと考えてみれば、それはきっと、本格的に婚活などをしてみてそれなりの数の女性と話をした中で、自分にはこのような他人に語り聞かせるようなロマンチックな出会いは今後も訪れることはあり得ないし、きっとこのような幸せな死に方はできないだろうことが現実として理解できてきたからだと思います。

私は昔からラブストーリーの映画とか全く観る気がしませんでした。他の人たちが何を求めてそんな映画を観るのか理解できませんでした。最近になって、現実にそんなことはあり得ないことがわかっているからこそ、みんな映画の中だけでも体験したいのだな、ということがわかるようになってきた気がします。

月並みな言い方ですが、言われればわかりきっているようなことでも腹の底から理解できるようになるのって、歳をとってこそのことなんだろうと思います。ダラダラと無為に人生を過ごしてきたけれど、それも一概に悪いことではなかったのかもしれないな、などと思うようにもなってきました。

そんなわけで、恋に燃える若者たちにも、人生の終わりを意識し出した壮年層にも、おひとりさまの最期を覚悟し出した中年層にも、みんな一度は観ておいてよい映画だと思いましたです。


泣ける映画と言えば

『私の頭の中の消しゴム』チョン・ウソン, ソン・イェジン(出演), イ・ジェハン(監督)
『アイアムサム』ショーン・ペン, ミシェル・ファイファー, ダコタ・ファニング(出演)

『きみに読む物語』ニック・カサヴェテス(監督)」に2件のコメントがあります

  1. ちょっとおひさしぶりです うちの母親はマジソン郡の橋 ?でしたっけ が大好きで。。。私は観たことないんですが名作らしいのでなんとなくストーリーは知ってるつもりなんですがw 母親は実は気になっていた人が他にいて、でもすきだのなんだの言ってる時代でもなかったし、ふつうにお見合いをして父親と結婚して若いときの淡い思いを思い出してるのかなー と思ってましたが。。。ある層にはこの映画は非常に人気があるんだそうですね そうか。。。淡い思いとかじゃなくて、そもそもありえないから映画で夢を見ているのかー。。。ちょうどゆうべ寝る前に恋に落ちる、なんてこと自分の人生にこの後起こるのかな、とふと思ってました 男女の出会いって、婚活にしたって、交通事故みたいなところありますよね 落ちる、っていうか落っこちるっていうか、 その後深いところまで落っこちていくような大恋愛って永遠の夢なんでしょうかね ありえないんでしょうか いや、ほんの少しの確率でぶちあたるケースもあるんでしょうか。。。うーん、わかりませんが 独身なもので、まだ<ある>の方を信じたいような、しかし、この年までないものはやっぱり夢でしかないと目を覚ますべきなのか。。。うーん、わかりませんw

    1. himitsuさん、コメントありがとうございます。
      『マディソン郡の橋』も有名ですよね。今度観てみます。
      私の感覚ですが、ある程度生きてくると相手に多くを期待しないようになってきて、手放しで相手にぶち当たる気力は起きなくなってきますね。
      だから、歳を重ねるに連れて大恋愛にはなる機会は減って行くんじゃないかな、という気がします。
      でも、老人ホームで男女関係のもつれで殺人事件が起きたりもしちゃうわけだから、歳をとったからもうそんあことは起こらないと言い切れるわけでもないんでしょうね。
      たぶん映画やドラマのような大恋愛に至るきっかけは誰にも訪れるのだけれど、それをうまく掴める人は相当に稀だってことなんじゃないでしょうか。
      私にもよくわかりません(笑)

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